たるのピアノ教室の垂野鮎子です。
PaletteTone のご相談窓口で、入会前にもっとも多くいただくのが、この種類のご質問です。
「価格が安すぎて、かえって不安です。プロ講師の添削が回数無制限と書かれていますが、本当ですか?」
価格と価値のバランスを訝るのは、健全な感覚だと思います。本記事では、この価格がどう成り立っているのか、サービス設計の側から開示します。
本記事を読み始める前に、お伝えしたいこと
PaletteTone に動画をお送りいただくときは、撮影は手元のみで構いません。顔も本名も出さずに参加できます。動画は会員限定の Facebook 非公開グループ内だけで共有され、外部の SNS や Google には一切出ません。退会は1クリックで、引き止めや煩雑な手続きはありません。
文中で出てくる「Palette Hour」は週1回 Zoom での聴き合いの場です。カメラオフ・聴くだけ・参加自体が任意で、ご自身の演奏を出すかどうかは完全に自由です。
結論を先に:これは「続けていただくための価格」です
価格設計の理由を最初に書きます。
PaletteTone の月額は、**「続けられるかどうかの心理的な境目」**として設定しています。月額10,000円のサービスは、続けるかどうかを毎月迷わせます。月額¥1,980 は、迷う必要のない金額として置きました。
これは、サービスを安く見せたい意図ではなく、**「価格を理由に途切れさせない」**という設計目的です。本文の以下は、その目的を、構造として成り立たせるための話です。
続けられない自分にお金を払うこと、への話
価格構造の話に入る前に、もうひとつ、入会を検討される方からよくいただく、率直なご質問にお答えします。
「自分は完璧主義で、何かを続けられた試しがないんです。続けられない自分にお金を払うのが、罪悪感があって」
PaletteTone は、この罪悪感を生まないように設計しています。
- 今月送付0回でも、退会していただかなくていい設計です。他の会員さんの動画と添削を読まれているだけでも、十分に得られるものがあります。
- 解約は、マイページから1クリックです。引き止めや、煩雑な手続きはありません(マイページが分かりにくければ、お問い合わせフォームからのご一言でも受け付けます)。
- 再入会のときの追加負担はありません。3ヶ月休んで戻ってこられても、また同じ月額で再開できます。
「続かない自分」に¥1,980 を払うのと、「続かない自分」に¥10,000 を払うのとでは、後者の方が罪悪感が大きく、結果として「やめる」を選ばせます。前者の方が、長く付き合えます。
月額を下げる目的の半分は、こちらの設計のためです。以下、もう半分の話(価格構造の話)に入ります。
講師の質は落としません
最初に明言しておきます。価格を下げるために削っていないのは、講師の質です。
- ピアノ添削: 垂野 鮎子(桐朋学園大学卒。ショパン国際ピアノコンクール in ASIA 銅賞・審査員特別賞、ピティナ指導者ライセンス上級)
- ヴァイオリン添削: 山岸 努(NHK交響楽団 第1ヴァイオリン 次席奏者。桐朋学園大学卒、辰巳明子・堀正文ほかに師事)
人件費を抑えて成立させる安価サービスとは異なります。講師の時給単価は維持しつつ、サービス提供の構造を変えることで、価格を下げています。
以下、その構造の話に入ります。
通学レッスンの料金構造
まず比較対象として、一般的な通学ピアノレッスンの料金がどう分解されるかを書きます。
| 内訳 | 月額に占める比重 |
|---|---|
| 講師の指導時間(45〜60分 × 4回) | 約50% |
| 教室・設備の維持費 | 約25% |
| 講師の移動・準備時間 | 約15% |
| 諸経費(月謝袋・連絡等) | 約10% |
出典:当教室の運営実費、および周辺(群馬県高崎市)と都内の楽器店併設レッスン30件を、定価表に基づいて集計した自社調査(2025年5月実施)に基づく概算です。
つまり、月額10,000〜15,000円のレッスン料の半分以上は、「同じ時刻に同じ場所にいる」ことのコストです。指導行為そのもののコストは、半分以下です。
PaletteTone は、この「同じ時刻に同じ場所にいる」前提を外しています。
構造転換1:同じ時刻 → 別の時刻でよい
通学レッスンは「先生と生徒が同じ時刻にいる」必要があります。これは予約枠の取り合いを生み、講師1人あたりの月間指導可能人数を制限します。
動画添削は、生徒が好きな時間に動画をお送りいただき、講師は好きな時間に添削します。両者の時間を合わせる必要がありません。
これによって、講師1人が見られる生徒数が、月単位で大きく増えます。
ただしここで誤解されがちなのですが、これは「講師1人の労働時間を増やしている」のではありません。1動画の添削にかかる時間は5〜15分で、これは通学レッスン60分の1/4〜1/12です。短時間で、回数を多く回せる構造です。これが価格に反映されます。
構造転換2:Palette Hour による「1対多」の聴き合いの時間
もうひとつの転換は、Palette Hour(週1回 Zoom での聴き合い、カメラオフ・聴くだけ・参加任意)です。
ここでは、講師1人に対し全会員が同時に参加します。講師の同じ1時間が、参加者全員に同時に届く形です。
ただし、ここで重要な区別を書いておきます。
個別の動画添削は、最後までお一人ずつ個別に行います。Palette Hour は、それとは別の「聴き合いの場」であり、講師が1対多で何かを教える時間ではありません。個別添削の質を、聴き合いで薄めることはありません。
お金の流れを開示します
サービス設計の数字を、開示できる範囲で書きます。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 講師1人あたりの担当会員数(現在) | ピアノ・ヴァイオリン各50〜80人を上限に設計 |
| 1動画の添削にかかる時間(平均) | 5〜15分 |
| 1会員あたりの月平均送付数(初期に入会された会員さんの観察) | 2〜6本 |
| 1日あたりの講師の添削本数の目安 | 5〜10本(週4〜5日) |
| 講師1人あたりの月の総添削時間 | 約20〜40時間 |
※これらは、講師の時給単価を維持するための数字です。¥1,980 × 50〜80人 の月額を、上記の総添削時間で割ったとき、講師(垂野・山岸)の音楽家としての時給単価が維持される範囲に設計しています。これは「安く見せるための価格」ではなく、講師の生活と指導の質を成り立たせる最低ラインとして引いた設計です。
なお、正直に書いておきます。現時点では、会員数は損益分岐に到達していません。サービス開始から日が浅く、上記の「50〜80人/講師」は最終的な設計値で、現状の会員数はその途中です。現状では、サービス全体としては赤字運用で、損益分岐到達までは当教室の本業(対面のピアノレッスン)から内部補助しています。
ここを開示する理由は、入会を検討される方が「価格と質の関係」を判断するのに必要な情報だからです。いま入会される方は、設計値に到達する前の段階での参加になります(その分、講師1人あたりの会員数が少ないので、添削の手厚さは設計値より厚くなります)。
数字は今後、会員数の増加に伴って見直しが入りますが、**設計の骨格は「講師の時給単価を維持しつつ、生徒側の月額を下げる」**で一貫しています。
行動経済学の言葉でいえば、月額¥1,980 は「払った分を取り戻したい、という気持ち(専門的にはサンクコスト効果と呼ばれます)」が弱い価格です。月¥10,000 のレッスンを払っている方は、「払った分は受けないと損」という気持ちで通います。¥1,980 はそのプレッシャーが効きません。
これはデメリットでもあり、設計の意図でもあります。次に書きます。
価格が安いことのデメリットも、正直に書きます
¥1,980 という価格の弱点を、開示しておきます。
- 「自分が払っている」実感が薄く、放置されやすい。月額10,000円の通学レッスンは「来週までに練習しなければ」という気持ちの圧が効きます。¥1,980 は、続けるかどうかの動機を、ご自身で作る必要があります。
- 個別の対面指導は受けられません。姿勢や脱力など、対面でしか修正しにくい部分があります。これについては、別途、個別オンラインレッスン優待(別料金)で補完しています。
- 講師の即時の反応は得られません。動画への添削は1〜3営業日以内に届きますが、即座のやり取りではありません。
これらは、月額制・非同期・聴き合い型という構造の自然な帰結であり、ごまかさずに書いておきます。
よくある質問
Q. お試し価格ですか?将来、値上げされますか?
提供しているサービス構造で、原価が変動する範囲では、現価格を維持する設計です。新機能を追加する際に、機能別の追加プランを用意する可能性はありますが、基本機能の月額を引き上げる予定はありません。
Q. 添削の質は、月額1万円のサービスと比べて落ちますか?
添削する講師(垂野・山岸)のレベルは、同等以上です。違いは、対面か非同期かという形式の違いであり、添削内容の質ではありません。
Q. なぜこの価格に設定しているのですか?
「大人がピアノ・ヴァイオリンを続けるための場が、価格を理由に途切れないようにする」が設計目的だからです。月額¥1,980 は、続けられるかどうかの心理的な境目として設定しています。
Q. 動画を1本も送らない月があっても、退会したほうがいいですか?
いいえ。退会する必要はありません。送付0回の月があっても、他の会員さんの動画と私たちの添削を読まれているだけで、得られるものはあります。
執筆: 垂野 鮎子(桐朋学園大学卒。ショパン国際ピアノコンクール in ASIA 銅賞・審査員特別賞、全日本学生音楽コンクール第2位。ピティナ正会員/指導者ライセンス上級。たるのピアノ教室主宰)